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雨季のオーストラリアをHuercoと旅する。 前編:クイーンズランド州


2018年6月1日
雨季のオーストラリアをHuercoと旅する。 前編:クイーンズランド州

こんにちは。Huercoアンバサダーの長嶋祐成です。石垣島に住み、魚の絵を描く魚譜画家(ぎょふがか)として活動しています。一人の魚好きとして、Huercoとともに巡る水辺の楽しみをお伝えしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします!

東アジアからオーストラリア付近の海流図

今回ご報告するのは、雨季のオーストラリアの旅。
旅のテーマは「海流を感じる」ことです。
日本の太平洋岸を北上し、房総半島沖を太平洋へと抜けてゆく黒潮は、南の海からたくさんの命を運びます。釣りをする方に馴染み深い「メッキ」(ギンガメアジ属の幼魚たち)もそのひとつです。黒潮の上流側に位置する石垣島で釣りをするようになって、僕は魚たちの分布を時に拡散し、時に隔てる海流というものに面白さを感じるようになりました。

オーストラリア北東部は南太平洋の環流の影響を受けており、黒潮をその一部とする北太平洋の環流とは異なる系に属します。しかし、インドネシアやパプアニューギニアといった赤道付近の海域を、命の供給源としていくらかは必ず共有しているはず。だからそこには石垣島で見慣れた魚も、似ているけど少し違う魚も、まったく違う魚もいるはずです。そんな顔ぶれに実際に出会うことで、海流という巨大な現象をこの身に感じてみたいと思ったのです。

いきなり苦戦しつつ、初魚種はおなじみの顔

旅はクイーンズランド北部のケアンズから始まりました。 車の免許を持っていない僕は、運転はすべて写真家の友人におまかせ。お互い、気になるスポットで停まっては釣りなり撮影なりをしてゆくというスタイルです。 事前にGoogle Mapを眺めてポイントをプロットしてあったのですが、早くも最初の地点で思い知りました。「オーストラリア、デカい!」地図上では石垣島の小さなマングローブ域のような見た目のところが、行ってみるとうねりが押し寄せる大きな河口なのです。数日来の悪天候で海が荒れ模様なこともあって釣りにならず、その日はビールや肉を買い込んで早めに宿に入りました。

翌日は早朝から港へ。すぐ足下でライズしているのですが、手を替え品を替えのルアーにはまったく無反応。ようやくソフトルアーにヒットしたと思ったら石積みの隙間に走られ、根ズレで切れてしまいました。「キープしてもいい魚」を示した立て看板によると、チヌやグランター(体高のあるシマイサキの類)がいたようです。ちなみにオーストラリアでは、総じて釣りの可否やキープの条件が行政によってその場に明確に示されており、遊漁者へのメッセージがわかりやすかったです。

「オーストラリアはデカい」という前日の教訓を踏まえて再検討したポイントを巡りますが、なかなか魚の反応が得られません。初めての場所で結果を出す難しさを改めて思い知りつつも…

コトヒキ。海は違えど変わらぬアグレッシブさ
コトヒキ。海は違えど変わらぬアグレッシブさ

ついに!初魚種はおなじみのコトヒキ。石垣島ではボウズ回避の切り札的な存在ですが、ここでも救われました。1個体だけだったのでなんとも言えませんが、日本のものよりひれの彩りが少しオレンジがかっているようです。 さらに同じ場所で小さなコチ。釣り人には「ミナミマゴチ」と通称されているコチ属の未記載種で、これも石垣島で見られるものです。

通称ミナミマゴチ。尾びれの黄色が特徴
通称ミナミマゴチ。尾びれの黄色が特徴

その日も終日ぐずついた空模様で、魚との出会いは以上。車は海沿いを離れ、世界最古の熱帯雨林と言われるデインツリーへと入っていきました。

早朝の川で入れ食い

翌日も早朝から、宿近くの船着場で竿を出しました。ここは前日夕方に到着した時には川の増水で完全に水没しており、柵のようなものだけが辛うじて濁った水面に見えていたのでした。朝になって船着場が姿を見せ、びっくりです。 その空間にあるすべての自然物の息づかいが織りなす「森そのものの音」を感じつつペンシルベイトを泳がせていると、突然30センチほどの魚が跳ね上がりました。明らかにルアーを狙っての空振りで、一気に目が覚めます。そして…

イセゴイ。無機質な表情がかっこいい
イセゴイ。無機質な表情がかっこいい

飛び上がった魚の正体はイセゴイでした。そこからはフィーバー。なかなかフッキングしないものの、1投1バイトの楽しい時間がしばらく続きました。

その日は熱帯雨林から再び海沿いへ。ビーチの眺めは最高でしたが、残念ながら河口域は釣り禁止の看板が。禁止と言われると「悔しいなあ、ここなら『絶対』釣れるのになー」などと安心して(?)豪語してしまうのは人の性というものでしょう。

ゴマフエダイ
ゴマフエダイ

ケアンズへと戻る道すがら、小河川でゴマフエダイをキャッチし、クイーンズランドの旅程を終えました。ここまで出会った魚はいずれも石垣島で見慣れた面々。それも嬉しいんだけど、全部知った顔というのは予定外だぞ!そろそろエキゾチックな魚を見たいんだけど、という軽いモヤモヤを抱えながら、次はノーザンテリトリー準州へ移動です。

後編へ続く

おまけ

クイーンズランドといえばグレートバリアリーフ。さすがに一度は潜っておかないと、ということでライセンスのない僕はヨチヨチ体験ダイブしてきました。ガイドさん曰く「9割がた、石垣島の魚と同じだと思います」。うーんやっぱり潜ってみてもそうか、と思いつつ、石垣島では比較的少ないと思われるMonotaxis heterodonが普通にたくさんいるのを見て、少し満たされたのでした。

長嶋祐成

長嶋祐成魚譜画家/Huerco official Ambassador

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石垣島在住。魚譜画家(ぎょふがか)。大学では思想、服飾専門学校ではクリエイティブを学び、広告とコミュニケーションの世界で7年間のディレクター経験を経て、現在は魚の絵を描くこと・魚との出会いを求めて水辺を旅する時間のために生きる。釣果や大きさだけに捉われない独特の目線で釣りを楽しむ。