「タイメン行かない?」
突然の電話で驚いた。
電話をくれた相手は普段から一緒に釣りに行き、色々と教えてもらっている釣り業界の先輩であるHuercoの中西氏(以下普段の呼び方で「ペス君」)。ちょうどその時期私は標高1000m近い雪山の喫茶店で働いていた。 キャンプや登山に誘われることはよくあるけれど、釣り旅の誘いは初めてだった。
ターゲットは、タイメンイトウ。 アムールイトウとも言われるその魚は、大きいものだと2メートル近くまで成長する、まさに「怪魚」と言える魚だ。 話を聞くと、なんとツアーではなく、自分達でルートを決めて、ドライバーを雇い、開拓しながら釣りをするスタイルだという。 聞いているだけで、ワクワクと夢が膨らんだ。
しかし実は海外自体が初。 経験が圧倒的にない自分からすれば未知の世界だが、男なら人生の一度くらい世界の大自然を冒険してみたくなるものだ。
ここで、今回一緒に旅したメンバーを紹介する。
まず、旅に誘ってくれたペス君は、国内はもちろん世界中で魚を釣っているフィッシャーマン。魚の特性や地形を読み魚を見つけ出すプロフェッショナルだ。ペス君にガイドしてもらって魚が触れなかったことはない。僕の友人の中で腕はトップクラスで、いつも頼りになる先輩である。
そしてもう一人は、ショータ・ジェンキンス氏(以下ショータ君)。 英語もペラペラで、コーヒーが好きで、パスタも作れる。 僕も将来こんな風になりたいなと憧れている全てがスタイリッシュでちょっとズルイ多才なお兄さん。 もちろん釣りも上手で、普段はトラウトを中心に色々な釣りをしている。 じつは釣り仲間というよりグルメ仲間だったりもする。 同じHuercoアンバサダーでありながらPatagoniaプロセールス登録者でもあり、BIGFISH1983のアンバサダーも務めている。 今回は交渉や語学力で旅を成功に導いてくれた。
最後に私、佐部利広大。 2018年からHuercoのアンバサダーを務めさせていただいている。 元コックで趣味はトライアスロン。 小さい頃ザリガニ釣りをきっかけに釣りを始め、20歳の頃には日本中で野営をしながら旅をした。 北海道の山に篭り釣りに明け暮れる経験をしたこともある。 今回のモンゴル旅では、アウトドアの知識を活かして野営や料理を担当した。
いろいろと考えていると、あっという間に出発日になった。 空港でショータ君ペス君のお二人と合流し、北京を経由してウランバートルに到着。 8時間のフライトではあったが、これからの旅が楽しみで仕方なく機内では映画を楽しむ余裕もなくあっという間に感じた。
町はそんなに大きくはなかったが必要最低限のものは全て揃っていたうえ、日本語が上手で陽気なドライバーも意外とあっさり見つかり一安心。 旅のスタートは翌日からになるため、初日は安宿に泊まり、次の日の朝に出発。
まずは食料その他の買い出しをするため現地のスーパーへ。 食料はパスタを中心に果物など、次の買い物ができる予定日程までの5日分の買い出し。
万が一のために保存食も購入した。
少し町を離れると、そこら中に大自然が広がっている。 荒野や草原が多く、ところどころ砂漠のような、砂と岩しかない場所もある。 遠くから見て丘が白いところは、雨が降らないから草木が生えないし、家畜も集まらない。 草木が多いところは、川があったり雨がよく降ったりするので、人や動物が集まり文化が栄える。 そこら中で動物が死んでいて、それを食べる動物がいる。
日本の道で見かける「死体」という印象はなく、そこにあるべきものなのだと感じた。 牛や羊が草を食べ、糞をして、大地を肥やす。
こんなにシンプルで「自然では当たり前の出来事」が新鮮に感じた。
釣りをしながら先にいるショータ君とペス君に合流するために急ぎ足で岩場を移動していると、岩陰から大きな鼠が勢いよく飛び出してきた。 そして川に飛びこみ泳ぎはじめた。 流れに乗りながら泳ぐ姿を見て感心していると、突然大きな水柱が上がった。 一瞬の出来事で、はっきりと見えなかったが、巨大な魚が鼠を丸呑みしたのだ。 ここは、釣り堀や水族館ではない――。
当たり前のように目の前で繰り広げられる自然の厳しさに、驚きながらも日本の旅では到底感じることのできなかった。 心から感動した。
車で丸1日走って、やっと中間地点の安宿に到着した。ここまでおよそ300km、舗装が行き届いているとは言えない道路。座っているだけでもなかなか疲れるが、幸運だったのが、ドライバーの車が日本製の車だったことだ。型こそ古いが、性能は折り紙つき。シートの座り心地もよく、最後まで力強くモンゴルの大地を走破してくれた。
朝宿を出て、ほとんど走りっぱなしで、2日目の夕方頃ついに目的地のチョロート川に到着。ここにたどり着くまでが大変だった。グーグルマップの衛星写真や、ドライバーの勘を頼りになんとかたどり着いた。さっそく各自テントを張った。初めて立つその大自然は、まるで某恐竜映画の中に飛び込んだかの様だった。
旅において、自分は必ずパックロッドを使う。ロッドは2本で、メインにXT610-4C。少し強めに、ベイトキャスティングロッドと、予備にXT511-5S。小型〜中型の魚を釣るスピニングロッドを準備した。正直、自分はこの二つで大体のルアー釣りは楽しめると思っている。
今回は電波も入らない秘境の釣りということで、宿もないところで釣りをすることが前提のため、テント選びはとても大切。まず軽いことやザックにしまえることが条件だ。今回は2人用の山岳テントを準備した。テント内に大型のザックを入れたり、ちょっとした作業をしたりしようと思うと、2人用がベストだと感じた。1人用だととても狭い。ちなみに、ペグダウンはしっかりすることが重要。平原が多く、風を遮るものが少ないからだ。
到着してさっそく水辺に立ち、釣りを開始する。
それぞれ上流・下流に分かれて釣りを開始。しばらくすると竿にアタリがあった。きっと自然と笑顔がこみあげていただろう。しかし、強烈な引きではなく、丁寧に引き寄せてくると、釣れたのは40〜50センチのサクラマスの様な、ウグイの様な、なんとも言えない綺麗な魚であった。仲間と合流すると、「レノック」という魚と判明。この魚はなんとタイメンの餌なのだそうだ。
しばらく釣りに夢中になっていると、あたりが暗くなり始めたので、この日の釣りはここまで。テントに帰り、晩御飯を食べながら焚き火をした。着火材は草食動物の乾燥した糞を使った。よく燃えるし、そこら中にたくさん落ちている。
タイメンの餌にもなるレノック。食べる機会があったが、水っぽくて、味はニジマスに似ている。
湖で釣れたノーザンパイク。
次の日の早朝、早く釣りがしたい気持ちもあり、こういう時は大体早く眼が覚める。 それにしても寒い。 初夏と言えど流石はモンゴル。 とても冷え込んだ空気の中で飲む自分で焙煎したコーヒーが旨い。 気合を入れて昨日反応があったポイントや、ペス君のアドバイスを受けながらルアーを激流の中にキャストし続ける。
ここで出なければどこにいるんだ?と言いたくなる流れの淀みにルアーが通過した時――。
(ドク!!!)
竿が大きくしなった。姿は見えないけれど、間違いなくタイメンと確信した。激流に乗りながらグイグイと糸を出していく。この時感じたのは釣りというよりも、戦いと表現した方がしっくりくるかもしれない。
心の中で無理かもしれないと思い始めた時。普段大人しいペス君が叫んだ。
「デカイ!!竿を立てろ!!あきらめるな!絶対とってやる!!!」 釣りをしていてここまで感情的になった事はない。 どうしても釣りたい!手にしたい!そんな気持ちで必死にハンドルを巻くが、腕はすでに限界が迫っていた! そしてついに、浅瀬に飛び込んだペス君がタイメンをキャッチしてくれた。
初めて見るその巨体は、神秘的でありながら少し怖さすら覚える。 これが幻と言われるアムールイトウ――。 琥珀色の瞳に銀色に薄っすらとかかるピンク色の体、朱色の尾鰭が印象的だった。 その魚はずっと眺めていたくなるほどに美しく、大自然が生み出した奇跡そのものだった。
手早く撮影を済ませ、本流の流れの中でタイメンから手を離した。 大きなエラから泡が溢れ、巨体はゆっくりと流れに逆らい姿をまた大河に眩ませた。
夜は焚き火がないと寒い。流木や枯れ木を集めて食事の後に星空を眺めながらコーヒを飲んだり、バラした魚の話や釣れたルアーの話でもりあがった。
一気に緊張がほぐれて体の力が抜けていく。おめでとうと言われ、追い求めた魚に出会えたのだと実感が湧いた。互いにびしょ濡れになり抱き合い握手を交わした。
後にも先にも、僕が釣れたタイメンはこれが最後だった。
3日目の昼過ぎ、水位は急激に上がり川は茶色に濁った。魚のアタリはパタリと止み、危険を感じた僕らはチョロートを後にした。
モンゴルを後にして日本に帰ってくると、当たり前に冷えたビールが飲め、蛇口をひねれば水が出て、そこら中に物が溢れている。
まず僕が向かったのは、故郷のラーメン屋だった。溜息が出るほど身にしみたが、同時に、何もない草原の上で星空を眺めて飲んだコーヒーが懐かしくなった。
ベイトモデル / 4pcs
遠征用4pcsベイト 10gのライトテキサスから2オンスクラスのビッグベイトまで。XT610-4Cは一本の竿でなんでもやりたいという想いをカタチにしたへビーバーサタイルベイトです。 ネバりの中に適度な張りを持たせたブランクス設計のため、テキサスリグやフリーリグ、ビッグワームのノーシンカーなどのワーミング、ラバージグなどの底物における使用時も感度良好。しなやかなティップ~ベリーセクションによりビッグミノーやS字形ビッグベイトのジャーク、羽モノなどのノイジープラグ、スピナーベイトやバイブレーション、ディープクランクなどの巻き物系にも対応します。 ティップは繊細、ベリーはしなやか、バットは強靭。ターゲットの硬い口周りにもしっかりとフックを貫通させ、ファイト時はフックポイントを支点にパワーを保持。ファイト時に首振りを得意とするシーバスやローリング系のファイトを繰り返す大型トラウトなど、硬くヘビーなベイトタックルではバレ易いとされてきた魚達とのファイトにも柔軟に対応します。 強度と使用感のバランスを損なうことなく最良のバランスでセッティングされた、仕舞寸法、約60センチの4ピース。スーツケースは ...続きを読む
スピニングモデル / 5pcs
コンパクトな5pcsライトスピニング 国内外における小型ルアーを用いたあらゆるライトゲームをカバーするXT511-5S。マルチピースロッドでありながら美しいベンドカーブが印象的なモデルです。 リトリーブ時やトゥイッチの際にはほんの少しティップが入り、巻き抵抗のあるヘビーシンキングミノーなどを使用する際にも、ティップからベリーセクションの張りを生かすことによってキレのあるアクションを生み出します。専用モデル…例えば、渓流トラウトや海のライトゲームモデル比べて、パワー感が比較的強めなのはXTシリーズのトラベルロッドとしての汎用性を高めた仕様です。イメージとしては30センチ程の魚を掛けた際に全体的に丁度良い曲がり具合になりますが、細い見た目に似合わず強靭なベリーからバットセクションまで、しっかりと曲げ込むことで、そこそこの大物も難なく浮かせてしまいます。テスト段階ではメーターを超えるソウギョなどをも楽に寄せてしまうパワーにスタッフも驚かされました。 また、取り回しを重視した5フィート11インチというレングス、クセのないレギュラーテーパーのため、カヤックやフローターからの釣りは勿論、キャスト時 ...続きを読む
トライアスリート、キャンプ場アウトドアインストラクター。幼少期より生き物や自然が大好きで、運動は誰にも負けなかったという少年がそのまま大きくなってしまった元・野遊び少年。トライアスロンやキャンプ、ルアーフィッシングの他に料理も得意で、春には野草のパスタや秋には焚き火で焼き芋など、大地の力や季節の美しさ、そして「いのちをいただく」ことの意味を大切にしている。