ピーコックバスを最初に目にしたのは幼少期の頃に父親が買ってくれた熱帯魚図鑑の中でした。アイスポットシクリッドという名前でテメンシスとモノクルスの二種が写真付きで掲載されていて、カッコよさと美しさを兼ね備えた魚体に強く惹かれたのを今でも覚えています。ガサ網を片手に用水路を駆け回った幼少期、捕まえてきた魚の飼育と観察に明け暮れる日々を経て、中~高校生の頃にはルアー釣りにハマり、熱帯魚の飼育にも熱中していました。大学生の頃には海外の釣りに興味を持ち、海外の魚の中でもとくに興味惹かれたのがツクナレ・アスーでした。ピーコックバスの最大種で、そのカッコいい魚体を現地で見てみたい…水面を爆発させる激しいバイトとアグレッシブなファイトを一度は味わってみたい…アスーに対する想いは強くなるばかりでした。
大学卒業後、数年間勤めた商社を辞めたタイミングで初めてのアマゾンへ。ブラジルのネグロ川奥地にて、現地で合流させていただいた釣り旅の大先輩と共に、アスーを狙いました。これまで飼育してきた魚や憧れの魚たちが目の前を泳いでいる…初めてのアマゾンは驚きと感動の連続でした。釣りの方はというと、水位が高くて大苦戦。何も釣れなくて自分たちの食料が無い…なんて日も。慣れない環境で体調を崩し、高熱でフラフラになりながらも竿を振り続けた末に…水面が大爆発!!激しいエラ洗いと共にアスーが躍り出る…あの光景は今も脳裏に焼き付いています。厳しいながらも念願のアスーを手にすることができ、記憶に残る最高のアマゾン旅になりましたが、釣ってみたい魚はまだまだ沢山いました。カショーロやタライロン、ピラルクに大鯰…調べれば調べるほどに行ってみたい川も増えて、次の年には二度目のアマゾンへ。そんなこんなで気が付けば南米大陸へと足を運ぶこと7回で、ブラジル・ベネズエラ・ガイアナ・スリナム・コロンビア・ウルグアイと、これまでに6ヶ国を巡りました。共に憧れの魚を追いかけてくれた友人たちには感謝の気持ちでいっぱいです。
バックパッカースタイルで興味のある魚を追いかけてきましたが、魚種豊富なアマゾンで釣りのターゲットとして最も夢中になったのはピーコックバスでした。アマゾンを訪れるキッカケになったツクナレ・アスーから始まり、これまでの旅で全16種類と未記載種の可能性があると個人的に思う数種類のピーコックバスに出逢うことができました。紹介したいアマゾンの魚はたくさんいるのですが、今回は大好きなピーコックバスについてお話させていただきたいと思います。

釣りの世界ではピーコックバスという呼び名が一般的で、バスと付きますが、サンフィッシュ科のブラックバスとはまた違った、シクリッド科の魚になります。アクアリウムの世界だとアイスポットシクリッドという呼び名が一般的ですね。「アイスポット」は尾鰭に見られる眼球斑に由来しています。食性は魚食性の強い肉食魚。ブラジルではツクナレと呼ばれており、スポーツフィッシングのターゲットとして、また食用魚としても親しまれています。最も大型になるとされるテメンシス種は80センチを超え、派手なアタックやアグレッシブなファイト、そのゲーム性の高さから世界中のルアーフィッシャーマンを魅了し続けています。

ピーコックバスの原産地、南米大陸における天然分布域はペルーやボリビア、ブラジルを流れるアマゾン河水系とベネズエラとコロンビアを流れるオリノコ川水系、ガイアナやスリナムなどを流れる独立河川などです。ブラジル国内においては数種類のピーコックバスが都心部に近いダム湖や、ピーコックバスが生息していなかったパラナ川水系などにも移植され、スポーツフィッシングのターゲットとして古くから親しまれています。



あとで紹介するイエロー系や一部の種類を除く、殆どのピーコックバスは成長過程において、魚体側面に白い斑点が見られます。テメンシスなどをはじめとした大型種においてはより明瞭に見られ、これらの白斑のことをパッカ斑と呼んでいます。パッカ斑のパッカは南米に生息する「パカ」という哺乳類の模様に由来します。パッカ斑の見られる個体を「パッカ型」、パッカ斑が見られずバンド模様などがくっきりと入る個体を筆者は「アスー型」を呼んで区別していますが、両者の違いはなんでしょうか。特徴で見ていくと、アスー型の特徴は体高が出て、ややでっぷりとした体型になる。止水域を好む傾向が強く、成熟したオスの頭部にはコブが現れます。パッカ型の特徴は体型がややスマートでアスー型に比べると引きも強い。流水域にも好んで居着く。などになります。パッカ斑が見られるのは基本的に小~中型の個体が多いですが、稀に大型個体にも見られますし、小型の個体にもパッカ斑がないアスー型の個体がいたりします。テメンシスなどの大型種だとパッカ斑が見られるけれど、バンドがくっきり見られるような中間型もいたりします。アスー型とパッカ型が存在するのはなぜなのか…両者の違いは「性成熟度」で、アスー型は成熟個体、パッカ型は産卵行動に参加したことのない未成熟個体が殆どになります。
初回のアマゾン旅にて、ブラジルのネグロ川でキャッチした自身初ピーコックバスは16lbクラスのパッカ型テメンシスでした。立ち木の際で掛け、強烈な突っ込みに耐えるだけでしたが、太軸フックは曲がり、平打ちリングも伸ばされていました。体系はアスー型なのに明瞭なパッカ斑。当時はデカいパッカだな…ぐらいにしか思っていませんでしたが、今思えばなかなかに貴重な魚だったな。機会あればもう一度あの強烈な引きを味わってみたいものです。

南米大陸のアマゾン広域に分布し、地域や川ごとに模様や雰囲気が変わるピーコックバス。2025年の現時点では16種類に分類されていますが、あまり釣り人が入っておらず情報が出てこない河川のピーコックバスや、同種とされているピーコックバス間においても雰囲気の違う個体群がいたり、新種の可能性があるピーコックバスはまだまだ沢山いそうだな…と、楽しみは尽きません。今回はこれまでの旅で出逢えた全16種類と、新種の可能性がありそうだなと個人的に思うピーコックバスを数種類紹介させていただきたいと思います。



有名な天然分布河川はブラジルのネグロ川、ベネズエラやコロンビアを流れるオリノコ川など。その他、アマゾン河の北岸と南岸の支流にも分布する大型種のピーコックバス。くっきりと入る三本バンドがトレードマーク。目の後方に入る黒斑は他の大型種のピーコックバスと比べて大きめ。ブラジルではツクナレ・アスーと呼ばれている、ピーコックバスの最大種。



主にアマゾン河の南岸と流入する支流に生息する大型種のピーコックバス。止水域を好み、ややスレンダーな体系をしている。三本のバンドは背中側でやや途切れ、頭側のバンドは中央で太くなるのがピニーマの特徴。現状、ピニーマとされる個体群もエリアや支流によって雰囲気が違っていたりして面白い。シングー川・下流にて。



ウァトマン川の中~上流部やトロンベッタス川の下流部など、主にアマゾン河の北岸の支流に生息する大型種のピーコックバス。三本のバンドはやや途切れる。目の後方に入る黒斑はテメンシスに比べて小さめ。ウァトマン川においては中流部のバルビーナ・ダム湖を境にして上流部はヴァゾレリー、下流部はテメンシスと種類が変わる。ウァトマン川水系・バルビーナにて。



アマゾン河の北岸に流入する、トロンベッタス川の中~上流部に生息する大型種のピーコックバス。カショエイラ・ポルテイラという滝を境にして上流部はティロルス、下流部はヴァゾレリーと種類が変わる。三本のバンドはより明確に途切れる。流水域を好み、体高があって筋肉質。本種が棲息するカショエイラ・ポルテイラより上流部は自然保護区になるため、許可を受けたポサーダ(釣り宿)を利用しての釣りになる。



アマゾン河の北岸に流入する、ジャリ川の中~上流部に生息する大型種のピーコックバス。三本のバンドは背中側で途切れる。バンドは太めで頭側のバンドは中央でとくに太くなる。2025年、自身7回目の南米旅でブラジルを訪れた際に、ジャリ川の河畔で知り合った漁師の兄弟と共に本種を追いかけた。水位が高く、簡単な釣りではなかったが、最後の最後で水面が大爆発。嬉しすぎて、声が枯れるぐらいに叫んだ。



天然分布はアラグァイア川とトカンチンス川水系。水質によって色見は変わってくるが、成熟個体の各鰭は青く発色する。ブラジルではツクナレ・アズール(青いツクナレ)と呼ばれている。青い魚体を一目見たくて、トカンチンス川水系のセハダメーザというダム湖にて本種を狙った。深場から飛び出してくる個体はとくに青みが強く、とても美しかった。



オリノコ川の中~上流部に生息する、オリノコ川の特産種ピーコックバス。同水系にはテメンシスやオリノセンシスなども見られるが、本種は流水域を好む傾向が強い。2015年に訪れた初回のベネズエラでは本種を探してオリノコ川の水辺を巡った。行き着いたのは川幅が狭く、急流の支流。本種に適した環境でまさに楽園だった。ピーコックバス探しの旅の始めるキッカケとなった魚でもあり、思い入れの深いピーコックバス。



ネグロ川やオリノコ川の中~上流部に生息。止水域を好み、魚体側面に並ぶ三つの斑点が本種の特徴。水質によって色見は変わるが、ネグロ川で釣れたグリーンな個体はとても美しかった。ネグロ川とオリノコ川で釣ったが、食べたら美味しいピーコックバスとして各地で定評。



タパジョス川の上流部に生息する、タパジョス川の特産種ピーコックバス。流水域・止水域のどちらでも見られ、成熟した個体は黄色みが強くとても美しい。2023年、自身6回目の南米旅でブラジルを訪れた際にテレスピレス川の漁師と共に本種を追いかけた、町から近くて漁師も多いためか魚影が薄い…しかし出れば大物。アマゾンで培った技術と経験の全てをぶつけて挑み、水面が大爆発!!魚が答えてくれた瞬間は嬉しかったな。



シングー川の中~上流部に生息する、シングー川の特産種ピーコックバス。生息環境は岩場の目立つ急流地帯で、流水域だと流れ脇の岩裏や地形変化に居着いており、止水のプールにも潜む。奥地出身、文字の読み書きができない漁師とシングー河畔にてキャンプスタイルで狙ったメラニアエ。トラブル連発でなかなかに大変だったけれど、苦労の末に出逢えたシブい魚体に痺れた。



アマゾン河において最も広域に分布するピーコックバス。イエロー系で生息地域によってバリエーションも豊富。将来的には何種類かに分けられる可能性も…??シングー川・下流にて。



マデイラ川の上流部に生息するイエロー系のピーコックバス。尾の付け根に4本目のバンドが見られるのが本種の特徴。仲良くなったブラジル人の友人たちとカヤックフィッシングで狙った。マデイラ川・支流にて。



ガイアナやスリナムなどの独立河川、ブラジル北部のネグロ川支流の一部に生息。イエロー系のピーコックバスで、バンドは短め。尾の付け根側のバンドは斑紋状かつ、明るい縁取りに囲まれるのが本種の特徴。エセキボ川・中流にて。



天然分布はアラグァイア川とトカンチンス川水系。イエロー系のピーコックバスで、腹鰭と尻鰭、尾鰭の下側にスポット模様が入るのが本種の特徴。トカンチンス川水系・セハダメーザにて。



ネグロ川の中~上流部に生息する、イエロー系のピーコックバス。バンドは短めで、バンドの間に黒斑が見られるのが本種の特徴。黒斑が多い個体や少ない個体など、バリエーションは豊富。ネグロ川・支流にて。



数年前に新種記載されたピーコックバス。ガイアナを流れるエセキボ川の中~上流部に生息。同水系にはオセラリスも生息しているが、オセラリスが止水域を好むのに対して本種は流水域を好む。エセキボ川・中流にて。



アスーと並んで憧れのピーコックバスだった、フォーゴ。タパジョス川の限られた支流に生息。ブラジルではツクナレ・フォーゴ(炎のツクナレ)と呼ばれており、赤く染まった魚体はとても美しい。今のところミリアナエの亜種扱いとされているけれど、同水系のテレスピレス川でミリアナエも釣ってみて全然違うなぁと思った…学術的なことはわからないのであくまで感覚的に。フォーゴが生息する河川の一つ、サン・ベネジット川は自然保護区になるため、許可を受けたポサーダ(釣り宿)を利用しての釣りになる。



独立河川・アラグァリ川で釣った大型種のピーコックバス。十字なバンドが良き♪シブめな体色と相まってカッコいい。現状はキクラ・ピニーマ扱いとされているけれど、実際に釣ってみてやっぱりちょっと違う気がする…



マデイラ川の支流で釣れたピーコックバス。個人的にずっと気になっていたピニーマ系の大型種。バンドの途切れ方も特徴的だけど、背中側にうっすらと入る縦縞模様がとてもカッコいい。



マデイラ川の支流で釣れたハイブリッド??なピーコックバス。ピニーマ系の大型種とプレイオゾーナが棲息していて、ちょうど中間的な雰囲気。同行者も前日に同じ雰囲気の魚を釣っているし、ガイドしてくれた現地の友人も後日にキャッチしていた。ハイブリッドだとしたら凄い確率…それともこういう種類がいたりして…??



現地において食材としてもポピュラーなピーコックバスは、魚市場に行くと目にする機会が多い魚種の一つです。現地の漁師さんにガイドしてもらって野営スタイルで釣りをする時や、奥地の村に滞在させてもらう際の主食は自分たちが釣ったピーコックバスになることが殆どです。淡白な白身で、塩をかけて直火で焼き、ファリーニャと呼ばれる黄色い粉と一緒に食べます。現地でピメンタと呼ばれているピリ辛ソースとの相性も良く、良い出汁が出るのでスープの具材としての登場機会も多いです。種類や生息環境によって食味は変わりますが、濁った止水域の個体は泥臭かったこともあって、比較的水の澄んだエリアや流水域の個体をキープするようにしています。今まで食べた中だと流水域のインターメディアと澄んだブラックウォーターのオリノセンシスが美味しかったなぁ…

アマゾンのルアーフィッシングはボートで岸際を流しながら、ストラクチャーをタイトに狙い打っていく釣りになります。キャストのアキュラシー性の求められるシチュエーションが多いのでオススメはベイトタックルです。ルアーはペンシルベイトやスイッシャーなどのトップウォータープラグ、ミノーやダート系のジャークベイトをメインに激しめに動かすパニックアクションを多用します。連日釣りすると腕や身体に対する負荷は相当なもの…ロッドの長さは5~6フィートクラスが扱いやすく、身体に対する負荷も少ないのでオススメです。リールは巻き取り速度の速い、ハイギア以上が理想です。ペンシルやジャークベイトをメインで扱うタックルの場合、PE4号をメインラインにショックリーダーはナイロン60lb。ビッグスイッシャーなどをメインで扱うタックルの場合はPE5~6号にメインラインにショックリーダー80~100lbを用いることもあります。カショーロやタライロンなどの牙魚が棲息する河川の場合、ワイヤーリーダーもお忘れなく。ショックリーダーとルアーの結束は各社のスナップなどいろいろ試してみましたが、交換時に時間はかかるものの強度面重視で今はソリッドリング×スプリットリングで落ち着いています。大きいルアーで大物がバッコバコ♪アマゾンに行くまではそんな幻想を抱いていた自分がいましたが、街から離れた奥地か、よほど状況が良くないと厳しいのが現実です。日本の釣りシーンで使用機会の多い、8センチクラスのミノーやペンシルが活躍する場面も多いのでボックス内に忍ばせておくと良いでしょう。リングやフックは強化しておかないと簡単に伸ばされてしまうので忘れずに交換しておきましょう。



ピーコックバスをメインに釣り歩いた2023年と2025年のアマゾン旅ではHuerco XT510R-4Cが大活躍でした。アマゾンにおけるピーコックバス釣りでの使用を前提に設計・開発したモデルなので、使用機会の多い8~12センチ前後のペンシルベイトやジャークベイトは勿論のこと、1オンス前後のビッグスイッシャーから、小物釣りで多用する6g前後のスピナーまで扱うことが可能なバーサタイルなショートベイトモデルです。仕舞寸法51センチの4ピース。キャスト~アクション時にストレスのない適度な張りとシャープさを持たせつつ、荷重がかかるとしっかり曲がるブランクス設計なので、大物とのファイトにも十分に対応します。アマゾンのみならず国内外のルアーフィッシングを楽しむアングラーに是非オススメしたい一本です。

今回は大好きなピーコックバスについてお話させていただきました。学術的なことは詳しくないので、あくまで釣り人目線、個人の主観の範囲内での話になりましたが、この記事を読んでピーコックバスやアマゾンについて、興味を持ってくださる方がいらっしゃったならとても嬉しいです。
分類上は現在16種類とされているピーコックバスですが、大型種はテメンシスとピニーマに、イエロー系のピーコックバスはモノクルスにまとめられるという話もありますし、もっと細分化されるかもしれません。ピーコックバスの分類がどうなっていくのかは一人の魚好きとして今後も注目していきたいと思います。
行ってみたい川や個人的に気になるピーコックバスはまだ沢山いるので、推しのピーコを探して…アマゾン旅はまだまだ続きます。
ベイトモデル / 4pcs
XT510-4Cはピンスポットへのキャストを繰り返すアグレッシブなゲームフィッシングのために、ショアからは勿論、ボートやカヤックからのキャスティングゲームでも扱いやすいショートベイトとして生まれました。今回のXTシリーズのリニューアルで軽快な操作性はそのままに、ロッドパワーおよび強度が大幅にアップしたことで、さらにルアー、魚種の幅が広がりました。南米アマゾンの釣りに代表されるような、ペンシルベイトやジャークベイトなど連続したハイテンポなアクションは設計コンセプトの中心となります。またトップウォーター以外でも、スピナーベイトやクランクなどの巻き物系にもよく、キャスト~アクション時の取り回しとファイト時の保持を両立させた ”長すぎず短すぎない” グリップレングス(さらに10mmの短縮化)。海外遠征には欠かせないほど幅広く対応するのがこの新生XT510R-4Cです。(*エクストラグリップも発売予定。時期未定)[XT510-4Cとのスペックの違い]●全長…同じ(1778mm) ●仕舞寸…同じ(510mm) ●グリップ長…10mm短い(418mm) ●リアグリップ長…10mm短い(287mm) ...続きを読む